授業(現代社会):日本国憲法の三大原理と憲法尊重擁護義務
教科書の巻末にある、日本国憲法のページを開くよう指示。
「今から、日本国憲法前文を音声で流します。目で追いながら、一番多く出てきた言葉は何か、考えてください。」
きたがわてつ「日本国憲法前文」を流す。最初は単なる朗読だと思いながら生徒も聞いているが、途中から歌に変わって生徒たちは大騒ぎ。ツボにはまって笑い続ける生徒、「こういうのなら、俺覚えられる気がする!」という男子もいる。
「さて、一番多く出てきた言葉は何だった?」
(国民、日本国民、われら)
「憲法前文で一番多く出てくる言葉は『国民』で9回。その次が『われら』で8回。国民が国のあり方や方針を決める、ということがよくわかる。」
ここで、「国民主権」について板書。「主権」という言葉は馴染みがないので、しっかり解説する。
「さて、今から2枚の写真をみてもらう。まず1枚目。この人、誰かわかるかな?」
といって、馬に乗っている戦前の昭和天皇の写真を提示する。
「今の天皇陛下の父、昭和天皇だ。昭和天皇の服装に注目してごらん。何を着ている?」
(軍服)
「そう、軍服だ。では、2枚目の写真はどうだろう?」
ここで、戦後に地方を巡幸しているときの写真を見せる。
(洋服に変わった、タキシードをきている、背広を着ている)
「この2枚を比べてみると、天皇のイメージはどう変わっただろうか。」
(偉い人から近い人になった、軍隊じゃなくて普通の感じになった)
「戦前は統治権の総覧者とされた天皇だが、日本国憲法では『象徴』として扱われることになった。」
象徴もイメージしづらい言葉なので、愛の象徴はハート、平和の象徴は鳩といった例から理解させる。
ここから、基本的人権の尊重と平和主義についてはさっと板書してしまう。その上で、次のように発問する。
「さて、ここで日本国憲法の章立てを見てみよう。『第1章 天皇』『第2章 戦争の放棄』『第3章 国民の権利と義務』は、それぞれ何章ずつあるか。」
(第1章は1〜8、第2章は9だけ、第3章は10〜40)
「気づくことはあるか。」
(第2章は1つしか条文がないけど独立している、第3章は数が他に比べて多い)
「第2章の戦争の放棄は、制定当時重視されていたので独立しておかれている。さて、第3章だが、権利と義務はどちらの方が多く書かれているか、考えてみよう。」
ここで、1人1条ずつ指定し、条文を読ませる。
「いま自分が読んだ条文の中で、自分の条文には『権利』が書かれていると思った人?」(多い)
「『義務』が書かれていると思った人?」(少ない)
「いま手をあげてもらった通り、第3章には国民の権利が多く書かれていることがわかる。国民の義務は3つ書いてある。」
この話から、「憲法尊重擁護義務」「立憲主義」へとつなげていく。「憲法を守る義務がある、と書かれていないのは次のうちだれ?」という4択クイズから、憲法は国民が守るべきものではなく権力者が守るべきものであること、国民はこの憲法に書かれた権利を保持していくために、権力者に憲法を守らせる(「立憲主義」)必要があることを示していく。*1
*1:この授業にあたっては、数々の実践から発問を頂戴している。2冊ほど参考にした本を挙げる。