支持率
「教師は内閣総理大臣のようなものだ。内閣の支持率が100%はあり得ない。」
中村健一『策略ーブラック授業づくり つまらない普通の授業にはブラックペッパーをかけて』明治図書, 2017, p.110
いよいよ年度末、クラス替えがどうなるかというのが子どもたちの最大の関心ごとになってきている。クラスメートもさることながら、担任が誰になるか、も気になるらしい。
生徒によっては、「来年も先生のクラスがいいです」と熱烈に言ってくる者もいて、それはそれでこの1年間でそう思ってくれたのね、と正直悪い気はしない。
でも、状況証拠から判断するに「この生徒は私のことを嫌いなんだな」という生徒もいる。そんな生徒の様子を見ると、「自分じゃなくて別な人が担任だった方がもっと育ったのかもしれない」*1と思ってしまう。
ただ、一番最初に引用した中村健一の言葉にもある通りで、生徒全員が自分のことを大好きで…という集団はあり得ない。あったとして、その集団は次が大変だ。その環境と次の環境のギャップが激しくなり過ぎてしまう。
そういう観点からすれば、今年度の自分のクラスは割と健全なのではないか、と思う。
*1:子どもは放っておいても「発達」(成長といってもよい)するので、別に自分が教員として育てたというわけではない。
板書案型指導案
来年度の授業改善に向けていろいろ検索している内に、「板書案型指導案」というのを見つけた。
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/c/0/9/c09b1410329a2668b208fd359302bdd7.pdf
この「板書案型指導案」なら、日常でもできる気がする。
というのも、私はこれまで授業ノートに「コーネルメソッドノート」を使ってきた。「板書案型指導案」のスタイルとコーネルメソッドノートは、レイアウトがピッタリ一致しているのだ。
来年度、提案性のある取り組みができるかもしれない。
なぜ太字になっているのか
テスト期間は早く帰って本を読むチャンス。今回はハヤカワノンフィクション文庫から数冊ピックアップ。
日本‐呪縛の構図:この国の過去、現在、そして未来 上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: R.ターガートマーフィー,仲達志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/12/19
- メディア: 文庫
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「海外から見た日本」という視点が非常に新鮮。
何より、この本の第3章を読むと、科目「日本史A」の流れが非常によく掴める。
たとえば、
金銀の交換比率が異なった
→金の海外流出but関税自主権なし=流出を防ぐ手段なし
→資本の蓄積不可能=軍備拡大等も不可
→農民からの「搾取」=地租改正、松方財政 but自由民権運動による「下からの反乱」
…という具合だ。
今年の授業をやっての反省は、教科書の太字(黒板では黄色で書くような)用語が「なぜ太字になっているのか」を明らかにできなかったことだ。
それがその時代を特色づける概念やできごとなのか、それとも別な事象を発生させる原因なのか…そういうところを教える側が理解しておかなければ、生徒はわかるはずがない。
次年度以降の持ち科目はまだわからないが、この反省は覚えておこうと思う。
「その列車には、他の人も乗っていたのですか?」
「つまり歴史の授業とは、私がそれまでやっていたこと、重要事項を具体的に解説し、歴史の筋道を分かりやすく図解ふうに板書して、生徒はノートをとるということではない。歴史の中で生きた人間の姿を授業の中に持ち出すことだ。」(安井俊夫)
『新版 中等社会科の研究』三恵社, 2018 p.275
安井俊夫のこのコメントは中学校での授業のことを言っているが、私が今勤めている「進路多様校」ー全員がその科目を大学受験に使うわけではないーでも、十分に当てはまる。
安井は「子どもには子どもの入り方がある。子どもには子どものわかり方がある。」(前掲書p.277)とも言うが、確かに、私がやっている「日本史A」でも思い当たる節がある。
この前は「田中義一内閣の内政と外交」ということで、張作霖爆殺事件を取り上げた。
個人的には、この事件の真相が国民には知らされなかったことに驚きを感じたのだが、生徒の感想用紙*1を見ると、「爆破された列車に、他の人も乗っていたのですか?」というコメントが各クラス5人ずつぐらいいた。
実際乗っていたわけだが、生徒がなぜここを気にするのかが気になるところだ。書くことがなくて仕方なくひねり出した、というにはこの感想を書いた人数が多い。
と言っても、この感想を直接授業につなげられるわけでもないが。それでも授業づくりのなんらかのヒントにはなりそうだ。
[新版] 中等社会科の研究 ―「地理総合」「歴史総合」「公共」の可能性と課題―
- 作者: 和井田清司,大野一夫,小林汎,田中祐児,篠塚明彦,西尾理,井田仁康,泉貴久,齋藤一晴,杉浦真理,米山宏史,加藤公明,春名政弘,川島啓一,和井田祐司,渋澤拓真,安井俊夫,福島達夫,高木行雄,保積芳美
- 出版社/メーカー: 三恵社
- 発売日: 2018/07/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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*1:毎回の授業で「授業でわかったこと/わからなかったこと」を生徒に書かせている。
「明後日の思想」
堀裕嗣氏の著作には毎回ハッとさせられる記述があるのだが、その中でも自分に最も影響を与えているのが「明後日の思想」である。
「あの失敗があったからこそ、いまの僕がある。あの経験は必要だったんだ」
三年後、五年後、教師を続ける自分は、こんなふうに現在の出来事を振り返っているかもしれない。「いまだけ」に縛られるとこんなふうには考えられない。
堀裕嗣『よくわかる学校現場の教育原理』明治図書, 2015 p.28
今日どうなるかでも、明日どうなるかでもなく、この、「三年後、五年後、教師を続ける自分」を想像するのが大事なのだ。
異動するぐらいの年数になって、「明後日の思想」の大事さをさらに噛みしめている。
こんなことを書くのも、今日まさに「明後日の思想」にお世話になっているからだ。
それでもまだちょっとつらくて、ストロングチューハイにもお世話になっている…(笑)
- 作者: 堀裕嗣
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
- 発売日: 2015/09/29
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